「紙ナプキンで折り紙って実は難しい。」
柔らかすぎるのだと思う。
俺の名は片桐篤。友人の選び方に多少の後悔を覚えた高校一年生だ。
「なるほど、田辺和真は別に宇崎由良と付き合ってる訳ではないのか。」
せっせと紙を折りながら俺の話をまとめるのは久保匠。どうでもいいが、なぜ面識のないこいつが先輩がたのフルネームを知っているのだろうか。
「久保くん、次はどうするんですか?」
なにやら複雑な折り目を付けまくってるのが日下部佳奈理。
っていうかそれはなんだ。どう折ればそうなる。
「見てろ。」
「見てます。」
久保もまた、手元の紙を複雑に折っていく。
「久保。最終的にそれはどうなるんだ?」
「ペガサスになる。それなりにポピュラーだぞ。」
驚いた。まさか久保が折り紙オタクでもあったとは。
「それはそうと、食わねぇのか。冷めるぞ。」
「馬鹿言え。こんな柔らかい紙で折ってるものを途中でやめたら再起不能になる。」
「わかってるならやるなよ、最初から。」
食事が始まったのは三十分後だった。
「いきなり時間を無駄にしたぞ。」
当然先輩二人の姿はもう無い。
「まぁいいではないか。折り紙に罪は無い。」
久保はポテトを摘みながら言う。
「さて、何の話でしたっけ?」
そして当初の目的をすっかり忘れている日下部。
「俺の、恋を…もういいや。」
一息置くと、言うのも気恥ずかしい。
「あぁ、思い出しました。…片桐、くん、は、ちゅぅ、んぐ。」
「食い切ってから話せ。いーから。」
むぐむぐと飲み込む日下部はそのままに、久保に尋ねる。
「おい、これからどーすんだ?」
「そうだな。とりあえずどうすれば片桐がめでたく恋人ゲット出来るかの会議をしよう、ということだったが。」
「非常に失礼な議題ではあるが、まぁいいとしよう。」
「そもそも、問題点はどこなんだ?」
久保は俺の頭の先から爪先までをも眺める。
「顔もそう悪い訳では無い。性格はわからんが嫌われるタイプではないだろう。」
そう言われると微妙に照れる。
美形の久保に言われるとちょっと嫌味っぽいが。
「果たして何が原因でそういった事と無縁なんだお前は?」
…一つ、確実に言える事としては、お前と友人だからじゃないかと思う。
日下部がやっと全て食べ終えた。