航宙機動部隊第二章・43

まっかつ  2007-06-01投稿
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『だけど、失敗したらやっぱり痛手は深いだろう?』
リク=ウル=カルンダハラとしては納得出来なかった。
カイシャンの所見は自分が抱いていた予想をより明確になぞってくれていた分、心強くも有ったが、この一点だけは両者の評価は完全に正反対だったのだ。
だが、カイシャンの自信には少しの揺らぎもなかった。
『なあ、カル―奇襲の本義を教わったろう?【敵手の心理を欺ける度合いが強い程より完全な勝利に近付く】だ。さもなくば、それは強襲だからな―戦争は飽くまで人間同士でしか行われないだろ?だからこそ良くも悪くもそこでは精神・思考面のファクターが大きな位置を占める』
『それは…分かるけど』
寧ろ分かり切っている兵学上の常識なのだが、それがどうしてそんな外道じみた作戦に繋がるのかが、リクの明晰な頭脳を以てしても、今だ理解出来ないままだっだ。
『敵の意表を突くのが目的として、俺が帝国の指揮官ならば、迷わずこの戦法を追究するだろう。それでダメなら、やはり正攻法の会戦形式で出来るだけ早く勝負を決めるな』
カイシャンはそこまで言い切った。
『うーん』
畳に正座しながら、流石に手詰まりになって、リクは腕を組んで考え込み始めた。
そして、おずおずと、
『十隻・百隻単位の小部隊なら、有りえなくもないが…それだと全軍か?…一万隻以上の質量を単純に光年単位飛ばすとなると…出現位置の調整がとんでもなく困難になると思うけどな』
『ある程度の犠牲を甘受する前提なら、面白いデータがある。グリーンチューブ・アウト時の誤差修正は、確かに対象質量に応じてその困難度を増すが、仮に百隻:千隻なら五三倍だが、千隻:一万ならどうなると思う?わずか一・三倍に収まるんだ』
『それは…でも、やった奴は居ないんじゃ?』
カイシャンは否定せず、頷いた。
『ああ、理論上の予測だ。だが、信頼性は高い。シミュレーションでもこれを裏付ける結果が出ている。更に面白い事にな―それ以上の規模になると、ある一定の確率に収束する傾向が有るみたいなんだ。原因は不明だが、何らかの時空上の臨界点が有るみたいだな』
『だが、帝国はこれを知っているのか?否、知っていたとして、未検証のデータを信じるだろうか?』
『それは向こうさん次第さ。だが、コロンブスの存在は何も地球時代に限った話じゃないからなあ』



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