恋人未満10

カトリ  2007-06-01投稿
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「ずっと奈緒が好きだよ。」


本人を前にして言えなかった言葉を哲也は言った。


「さっきのは嘘だよ。奈緒は一言もそんな事言ってない。」


健吾は、坦々と話を続ける。


「俺ら、うまくいってるし、卒業したら結婚する。」

「俺は奈緒が幸せならそれでいい。」


意外な哲也の言葉に、健吾は戸惑った。


「は??何だよそれ。」


「俺は、奈緒に気持ちを伝える気ないし、2人の仲を壊す気もない。
ただ、奈緒には幸せでいて欲しい。」


「そ。分かった。安心したよ。」


哲也の奈緒に対する気持ちの大きさを、健吾は認識した。

同時に、自分の情けなさも痛感していた。




「あれ?健くん?」


奈緒のバイトが終わるのを健吾は裏口で待っていた。

「奈緒、話があるんだ。」


「ん??」


「今までありがとう。」


「…えっ…?」


「哲也、いい奴だもんな。」


「…健く…ん?」

「無理させてごめんな。」


「なんで?私無理なんて…」


「本当は、放したくない。他の奴の事を考えてる奈緒でも側にいて欲しい。」


「でも、それじゃあ、お互い辛いだけだから。…ね。奈緒。」


「……ごめ…なさい…」


奈緒の瞳から涙が溢れた。


「謝る事ないよ。ずっと気がついてたのに、無理させたのは俺なんだから。」


健吾は奈緒の頭を撫でる。


「ただし、ちゃんと、哲也に気持ちを伝える事。」


うつむいた奈緒の顔を覗き込み、ほほ笑みかける。


「…うん。」



伝えなくちゃ。


ずっと、言えなかった言葉。


壊れる事が恐かった。


離れてしまうことが嫌だった。


でも、今は、ゼロからだから…


ただ、聴いてくれるだけでもいい。

嫌われてもいい。


メールを打つ。


《哲、会いたい。》




返事はこなかった。




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