「これが出来たての台本です」
孝志からそれを受け取る。
昨日、うちが何故メイド服を着せられてたか。今になって、ようわかったわ。
《メイドとご主人様》…そのままや(笑)
表紙をめくって登場人物の所をうちに向ける。
「主役のメイド役を阿部さんにやって貰うつもりです」
うちは台本見ながらポツリと言った。
「沙野子でえぇで」
…。
「えぇ!?」
何驚いてん。
「呼びにくいやろ、阿部さんて」
「あ、あぁそっちですか…」孝志が頭をポリポリと掻いてる。
「そっちって…他にどっちがあるんや」
うちの突っ込みに、ははっと笑っとる。
「えと、じゃあ…沙野子さん」
「うん」
「さっそく明日から練習予定なんで、それ一応、ざっと目を通しといて下さい」
そう言って、うちの台本を指差す。
「ん。わかった」
「それと…」
何や、カバンの中をゴソゴソしだしたで。
「これ…」
おっ!中から出て来たのは近場にあるゲーセンのタダ券。
「協力して貰うお礼って言ったらおかしいですけど、二枚あるんで良かったら…」
「おーきに♪」
うちはひったくるかの様に受け取った。
これ、多分使えるな☆
…?
「どしたんや?」
孝志が何か呆然としとる。ひったくったからか?