『滅ビヨ…』
低く唸るその声は空に響いた。
そして各所での突然の爆発。
それは朱き竜の吐いた焔であることは明らかだった。
朱き竜はところ構わず周囲を焼き尽くしている。
『早く朱き竜を止めないと…!』
そこには深い緑で覆われていただろう、今や焼けた大地となっている。
凄惨な光景にアインは絶句する。
『そう、慌てるな小僧…』
レグナが女神の塔へと下降を始める。
『アイン!』
折りたと同時にリリーナが駆け寄ってきた。
『無事だったか…リリーナ。』
安堵の息をつこうとした時だった。
『っ!?』
マナが杖を構えていた。
その視線を追う。
『お前…っ竜眼の!』
こちらを見据えてくる竜眼の男、レオンが立っていた。
『朱き竜に何をした!?』
アインは叫ぶが、レオンは無言のままこちらを見てくるだけだった。
『朱き竜の暴走を止めろ!このままじゃ…世界は終わるぞ!?』
やはりレオンは無言のままだった。
頭に血が昇ったのを感じたと思った時には既にレオンの胸倉を掴んでいた。
『お前!!』
『待て!アイン!そいつ、喋ることが出来ないんだ!』
後方でリリーナが言った。
『え…?』
腕の力を緩める。
レオンは異変に気付いたのか上空を見上げた。
『朱き竜っ!?』
『いかん!!』
レグナが吠えた。
朱き竜アデルの口から巨大な火の球がどこかへと吐き出される。
立て続けに何度も違う方向を向いては炎を吐いた。
近場で着弾する度、大地が揺れる。
『ニンゲン…殺ス!』
言い残しアデルが飛び去る
『アイン!朱き竜を止めるんだ!』
リリーナの顔が悲痛に歪んでいた。
『朱き竜は…全てを焼き尽くすつもりです!町や村を!』
そう言ったマナに無言でアインはうなづく。
引き離していたレオンへの視線を再び戻し、レグナへと駆け登る。
『マナとリリーナに手出してみろ…殺してやるからな!』
『小僧!飛ぶぞ!!朱き竜の気配が消えてしまう』
『ぁあ!止めるんだ…絶対に!!』
アインとレグナは空へと舞い上がる。