一週間待っても、哲也からの連絡はなかった。
いつ携帯が鳴ってもいいように、肌身放さずポケットに入れていた。
バイト中も、寝る時も。
それでも、ディスプレイに哲也の名前が出ることはなかった。
哲の声が聞きたい。
哲の笑顔がみたい。
哲に抱き締めて欲しい。
携帯を鳴らした。
留守番電話につながった。
「…哲…私…会いたいよ…」
涙が込み上げる。声が震え、言葉がつまった。
奈緒は電話を切り、握り締める。
哲、お願い。
一度でいいから…
「哲也。今携帯なってたよ。」
シャワーから出て来た哲也に美里は言った。
「ん〜。」
着信 ナオ☆
メッセージあり
「誰から?」
美里は哲也の肩に手を掛け上目遣いで見る。
「お前には関係ない。」
美里をベッドに押し倒す。
美里と何度キスしても、抱き合っても、奈緒の事で頭がいっぱいだった。
その気持ちを紛らすために、哲也は都合よく美里を呼び出した。
「ねぇ。哲也」
行為がすむと、哲也はすぐに服を着る。
「ん?」
「ちゃんと、私と付き合って欲しい。」
「そういう、面倒な事言うなら、もう会うのやめよ。」
最低な男…
自覚していた。
「待って!もう言わないから!!」
美里は慌てて服を着て、部屋を出ようとする哲也を追う。
俺は、奈緒に対しても、同じ事をしていた。
そんな男が…
こんな、最低な男が、今更、奈緒にどんな顔をして、会えというんだ。
哲也は、そのまま、奈緒に、連絡をすることはなかった。
歩いて、10分程の距離の場所に住んでいても、偶然、は訪れなかった。
あれから、ひと月以上経った。
哲也からの連絡を待ち続けた。
奈緒の哲也に対する気持ちが小さくなった訳ではなかった。
それでも、連絡を待つ事は、苦ではなくなっていた。
いつか、また、会えた時、自信をもって、気持ちを伝えたい。
そう考えれば、会えない時間も乗り越えられる気がした。