哲也は、合コン三昧の毎日、そして、多数の女とのセックスにうんざりしていた。
結局、合コンをしても、奈緒に似た感じの女を探す。
どれだけ、女を抱いても、満たされる事はなく、虚しさだけが残る。
そして、日が経つにつれて、奈緒の存在の大きさを目の当たりにする。
バイトに向かう途中、奈緒の家の前を通る。
奈緒の部屋の電気は消えていた。
健吾さんと、幸せでいるだろうか。
きっと、そうに違いない。
「おっす。哲也。」
久しぶりに、学校で会った健吾の横には違う女性がいた。
「?健吾さん…何?その女。」
「彼女。」
「って、どうゆう事?」
哲也は、健吾の胸ぐらを掴んだ。
「…おいっ…哲也、もしかして、聞いてない?」
「えっ…?」
夜10時
バイトが終わり、裏口から、出て来た奈緒の目に入ってきたのは、哲也が乗っていたのと同じ車だった。
哲也が好きな、缶コーヒー。
哲也と一緒によく聴いていたCD。
哲也と一緒に買いに行ったスニーカー。
日常のほんの些細な物ごとに、哲也を感じていた。
元気かな。
また、同じ車を見つけた。
「今度は、色まで一緒…。」
溜め息がでる。
車が止まり、運転席のドアがあく。
聴き慣れた洋楽が聴こえた。
「奈緒!」
奈緒は立ちつくしていた。
目の前まで、駆け寄って来た人。
「…て…つ…」
声にならない。
涙が止まらない。
「奈緒??泣くなよ…」
「…本物…?」
「あほ。」
髪をくしゃっと撫でられる。
大きな手。
ずっと、聴きたかった声。
懐かしい、まなざし。
呼んで欲しかった名前。
「哲、私…」
言いかけた言葉を阻むように哲也は口を開いた。
「ごめん。奈緒。」