らぶふぁんとむ4

あこん  2007-06-05投稿
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恵一がディスプレイを確認すると、電話の主は親しいクラスメイトだった。
「もし?」
『あ、恵一かい?』
これは恵一以外の誰のものでもない携帯電話だが。
「なんだよ、孝太。」
電話の主、日村孝太は真剣な声音で続ける。
『隣りのクラスの宮田珠希さん、知ってるかい?』
「…あ、あぁ。」
珠希を見ると、窓を開けようと奮闘している所だった。窓枠を手がすり抜けてしまっているが。
『…へぇ、恵一知ってるんだ。で、彼女が昨日転落死したみたいで、今朝見つかったんだ。』
(今朝まで見つからんかったのか。)
『僕は去年同じクラスだったから少しは知ってるんだけど、驚いたね。去年の連絡網まで回ってきたもの。』
「そうなのか。」
『お葬式、あるみたいだよ。恵一はどうする?』
「…俺はいいや、同じクラスだったことは無いし。」
『…そう、じゃ月曜にね。』
一言、二言会話を交わして通話を切った。
恵一が窓の方を見れば珠希の姿は無い。
「ありゃ?宮田?」
「はーい。」
ずぶぶ、と珠希の頭が床から生えてくる。否、階下から床をすり抜けてくる。
「…器用な事を。」
「そうでもないです。ところでさっきの電話、日村くんですよね?」
「あぁ、お前の身体が発見されたって。」
死体、と言うのは憚られた。
「あ、思ったよりも早かったですね。」
「そうか?帰りが遅くなったら家族が心配するし夜中には見つかると思うが。」
「いえ、私親とかいないですから、月曜まで誰にも不審に思われないと思ってたんですけど。」
またも恵一は失言をしてしまったらしい。
「あ、身寄りが無い人の葬儀って誰があげてくれるんでしょう。」
しかし珠希は気にした様子も無い。
「…さぁな、孝太は今夜やるみたいなことを言ってたけど。」
「…名前。」
「うん?」
「名前いいなぁ!」
「うわ!?」
恵一が孝太と呼び捨てる事に注目した珠希はずいっ、と詰め寄る。
「同居することですし、名前で呼び合いましょ、恵一くん。」
「…。」
とりあえず黙っておく事にした恵一だった。

「恵一くん、家はこっちじゃないでしょう?」
夕方が近付き、珠希を連れ添って卵その他を買いに出た恵一は、学校に向かって歩く。
だが目的地は学校ではなく、ちょうど家との中間辺り。
道路の端に、幾つかの花束が置かれていた。



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