刑事は後生大事にくるんだ布を広げた。
そこには透明のビニールに真空パックの状態で黒い物が入っていたのだ。
「分かりますか?これはライターですよ。」
それは焼け焦げ、原型を留めておらず炭の塊に変わっていた。
「ご存知の通り着火するのに仕様されたと思われる重要参考の品です。」
鑑識で立証されたのだろうか?
それは紛れもなく私がポケットに忍ばせ、最後に仕様したイヴ・サンローランのライターに間違いはなかった。
「このライターは…黒焦げになった仏さんが掌に握りしめていました。」
そうなのだ!
あれは幻などではなかった。あの人は私の気持ちを受け止め、自らの人生にピリオドを打って炎に飲まれて行ったのだ。
「そして…そのライターと一緒に大事に握られていた物がもう1つ…。」
そう言うと更に刑事は差し出してきた。
それは…歪んで黒く焦げ傷んではいたが、確かめると…リング?
そうだ…私との…結婚指輪だ!!
片目から止めどなく涙が溢れました。声にならない声を上げて泣きました。
記憶を呼び起こすように、フラッシュバックして映るあの瞬間の夫の姿が…。
あの時、朦朧とした意識の中で夫は、自ら私の手を振りほどき出口へと私を突き飛ばしたのだ。
「あ〜…あなた…」
動かない体、喋れない口を震わせて、気が触れたように泣いたのです。声にならない声で…。vol.11続く