お客の水割りを作り、指名者である城の飲み物も作った。
俺達も飲んでいいからと言われたので、自分で水割りを作った。
自分が飲む時は、必ず指名者かお客に許可をとってから飲むようにと言われた。
乾杯をして飲み始めたいいが、何を話していいかわからない。
俺と真樹はだまって二人の会話を聞いているだけしかなかった。
タバコも吸っていいらしい。
ただタバコはつけてもすぐに次の席のヘルプで席を立ったりするので一吸いしては、消してばかりだった。
あっという間に一箱がなくなってしまう。
そうこうしているうちに、城もあわただしく席を立って動き出した。
梶、赤坂の客もきたのだ。
まだ二人は出勤前だ。
お客は来たのに指名ホストがいない。
指名者がくるまでお客を楽しませるのもヘルプの仕事。
灰皿を取りに行きながらフロントのリストをみると俺と真樹ところに五つのテーブル番号が書いてある。
急いで席に行き挨拶をする間もなくお酒を作った。
今の俺達にしゃれた会話は必要ない。
灰皿交換と酒作りだ。
お客をテーブルに一人にしておくのはよくないことなので、俺達が座っているだけでもよかったのだろう。
梶の席に着いていたときだ、お客がまだ梶は来ないのかと、いらいらしながら怒っている。
俺はタバコをふかし客のお酒を作るだけで何も話せなかった。
空気が重くて席に座っているのが苦痛だった。
何杯も水割りを作らされ、お客の体には、どんどんアルコールが入っていく。
「ちょっとあんたなんかしゃべりなさいよ。」
いきなり言われて俺は、固まってしまった。