7月20日―\r
彼は、疲れた顔で帰ってきた。仕事が忙しいのだろう。早めに夕飯を終え、早い時間に床についた。
私は、今日ぐらいは早く寝ようと彼とベッドに入り目を閉じた。
ドンドンドン…ドンドンドン!!!!
はっと目を覚ました。玄関から、ノックの音が響く。
時計を見ると深夜2時…。
(もう、やめて…お願いだから。)
頭の中で悲鳴を上げながら、布団の中で耳をふさいだ。
数分たち、耳から手を離すと、辺りは静まり返っていた。
と、思ったら…
コツコツコツ…。廊下を歩く足音がする。
でも、遠ざかってゆく。安堵感から、布団に入っていた頭を出した。
【ドンドンドン!!ドンドンドン!!】
激しい音に、悲鳴を出してしまった。ベッドの横にある窓を、誰かが叩いている…。彼は、未だに夢の中にいた。
恐怖感から、冷や汗が背中を濡らし、寝巻きが体に張り付く感じがする。涙が止まらない。
(お願い…やめて…)
また、布団に潜り込むと
コツコツコツ…足音は、遠ざかる。
【ガッチャン】
恐怖で心臓が痛い。今の音は…玄関のドアを開ける音…?
頭の中で、考えが巡る。
私は今日チェーンをした?…いや。彼が帰ってきてチェーンを外してから、チェーンをしていない…!!
ぎ…ギ…ギ…。
ドアの開く音がする。
布団に潜り込みながら、ドアを凝視した。
男性の手が見える。3センチほど開いたドアに何かを差し込み、カチャカチャと音を立てている。
廊下の光りが射し込み、音の正体を照らした。
出刃包丁が光った…。
【きゃーーーー!!!!】
悲鳴をあげ、半狂乱になる私を彼が押さえた。
「どうした?びっくりさせんじゃねぇよ!!」
息を整え、玄関を見ると鍵は閉まっていて何も変わらぬ、いつものドアだった。続く