日が暮れ始め、幸一の部屋の窓には西日が鮮やかに差し込み始めた。その眩しさで嘉代は目を覚ました。
「寝ちゃった…!ごめんなさい!こーちゃ」
目の前には幸一と見覚えある女性が立っていた。幸一の母親だ。
「美早紀さん!」
小学校の頃、嘉代は幸一のお母さんを名前で呼んでいた。とても美人で優しく、嘉代の憧れの人だった。
「嘉代ちゃんお人形さんみたいになっちゃって」
うっとりしたように美早紀は嘉代を見つめた。
「中身は変わってなかったけどな」
「そりゃあんたもでしょうが。下行ってお父さん手伝ってきな」
言われるがまま幸一は下へと下りていった。
美早紀は床に座ると嘉代をじっと見つめた。
「嘉代ちゃん、家で暮らさない?」
嘉代は耳を疑った。
しばらく表情も作れなかったが、
「え?」
という小さい声が出た。
「実は実代(ミヨ)ちゃんから相談されててね」
「お母さんが……!」
「自分がもしもの時には、もし良ければ住まわせてやってって」
しかし嘉代は首を横に振った。いくら幼なじみの家でもそこまで甘えるわけにはいかない。