佳奈美の話を聞いて二人は唖然とした。
「さいたま市って現世の都市名じゃない…しかもその二人ってまさか…」
ヘレナの表情が曇る。
「現世?じゃあここはやっぱりあの世なの!?」
佳奈美が現世という言葉に過剰に反応する。
「ここは天界と呼ばれる死後の世界だ。
地形や国、科学技術などは現世とほぼ同じ。
地名や通貨、法律なんかは現世とは違っている。
天界には『さいたま市』って地名は存在しない。
天界の埼玉県の県庁は大宮市だ。」
勇は淡々と説明した。
「つまり現世で敬と快に襲われたって事になるわねぇ。ブラックリストだったのかしら・・・」
「辛いと思うが・・・現世で死んでからの事を話してくれないか?」
勇はさっきより少し落ち着いた様子で佳奈美に質問した。
「殺された後、知らない部屋の中に居てすぐ側の床に携帯とアドレスと番号が書いてある紙を拾って、それから…急に喉が乾いてイライラして…その後は…あれ!?思い出せない…」
「俺が話した事は覚えてるか?」
勇の質問に佳奈美は黙って頷いた。
「喉が乾いてイライラした後気が付いたら道路にいて・・・」
「分かった。もういい。」
勇は声が震えている佳奈美の話を止めさせた。
これ以上話させる事は無理と思ったのだろう。
『自分が殺した事は覚えて無いのか・・・』
佳奈美はうつむいて震えていた。
しかも何か呟いている。
「ごめんな・・・無理に思い出させてしまって。」
勇は佳奈美にあの地獄の光景を思い出させてしまって悲しませてしまったと思い謝った。
「い・・・いっ・・・嫌・・・嫌!!!」
佳奈美はガタガタと震えながら勇の腕を掴んだ。
そしてその瞬間、勇はある事を察した。
「ヘレナさん!早く血を持って来て!発作だ!!」
しかしもうその時には佳奈美は勇の腕に噛み付いていた。