夜とあなたとあたしの匂い?

かなこ  2007-06-06投稿
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 あたしは大事にされていた。多分大事にされていたと思う。

 あなたに出会って半年、1年、と時間が過ぎていった。2人とも夏生まれで、お互いの誕生日を祝ったり、あたしの20歳初のお酒解禁に祝杯をあげたりした。6つ年上のあなたを「おじさん」と言ってからかうと、
「俺も四捨五入したら三十路だよ。男は30からだからなぁ。俺はいい男になるぞぉ。佳世は幸せ者だなぁ。」なんて、あたしの頭を軽くポンと叩いたりした。
 誕生日以外でも、特別な日じゃなくても、あなたはあたしの隣に居た。あたしを側においてくれた。頻繁に会える訳ではなかったけれど、クラスメート以外で一番一緒の時間を過ごした人だろう。
 でもあたしはあなたの彼女じゃない。それは嘘のような真実だった。あたしが作った真実だった。

 あなたがたった1回だけ、「好きだ」と言ったあの夜。
 春の匂いに包まれた夜だった。



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