表示中の発信元を確かめるやいなや、リク=ウル=カルンダハラはその場を辞し、奥に飛び戻った。
『はいっ、共和国宙邦・観戦武官ですが』
遂に宣告が下される時が来た―不吉な予感が自身の胸の九割を占める重苦しさに苛まれながらも、早く知りたいと言う衝動を少年が抑える事は出来なかった。
(もしもし―貴国の国家監察官殿についてですが―たった今災害用緊急ホットラインに連絡が入りました―)
そして、玉砂利を踏みしめながら息を呑む彼に、決定的な話が告げられた―\r
『―はい、そうでしたか!彼女から直にっ!』
安堵すべき所なのに、何故か不思議と興奮が高まり出した少年の喋り方は、ほとんど怒鳴り声みたいになってしまう。
(今直ぐ現況を伝えたいとの事なので彼女にお繋げ致しますがよろしいでしょうか?)
その断りを合図に、連合艦隊通信局の女性オペレーターとは違う、しかし、良く知った声に変わった。
(リク!?私だけど!)
『テンペ!無事だったか!?』
同胞は生きていた―だが、皮肉にもリクは今だ実感が沸かなかった。
反面少女の方が、眼前の危機を脱したばかりの生々しさに満ちた様子だった。
(私の泊まったホテルから川を挟んで僅か一0km先の露天型スタジアムがやられたわ!私の部屋―最上階に近いから爆発光も良く見えたしそのすぐ後は猛烈な熱風に襲われたけど―とにかく今は大丈夫よ!)
『そうか―で、戻れるか?』
(ええ―第二・第三のテロが有るかも知れないから宇宙港の安全が確保され次第私達公人組は全員《D=カーネギー》に返すって議長が―それと今はこんな事態だから無理だけど―いずれお会いして貴方にも陳謝したいって)
『ああ…そうだろうな』
(それにしてもびっくりしたわよ―マエリーがお忍びでこんな所でライブしてたなんて)
『…えっ!?』
少女の嘆きを聞いて、観戦武官の全身に衝撃が走った。
『マエリーって…太子党じゃないのかよ!?何で、彼女が!?』
(何でそこまで知ってるのよ?)
テンペは訝しがりながらも、
(もう―ショックよ―彼女―太子党の中では数少ないリベラルだったし―私とか一般出身者に随分良くしてくれたのに―凶弾に倒れるなんて―)
『そ…そんな』
思わずパネルカードを落としてしまったリクは、少女の問いかけも耳に入らぬまま、その場に立ち尽くした。