走りながら考えた。
私が行ってどうするの?
シュウジには看病してくれる彼女がいるのに。
私が行ったってシュウジを困らすだけじゃんか。
否定的な思いばかりが湧いてくるのに、足は止まらない。
《風邪を引いたのは私のせい》
それだけを武器にシュウジの家のインターホンを押した。一人暮らしのシュウジは案外早くドアを開けた。驚いた顔を私に向ける。
「へ?エリカ?なんでお前…」
…39度も熱があるようには思えないんですけど。っていうか、むしろ健康そのもの…みたいな顔色。
「…シュウジ…風邪で熱…出たって聞いて…」
息を切らしながらそう言うと、シュウジは視線を逸らして髪をくしゃっと掻きあげた。
「…とりあえずさ、うちん中はいれよ」
促されて部屋に入ると、今までプレステをやってた形跡が。…まさか…
「仮病…?」
私の呟きに明らかに動揺するシュウジ。なんか…クラクラしてきた。
「いや…あのさ、昨日…お前に言われたこと考えてたら眠れなくて…で・寝坊して…。めんどくせぇから適当に嘘言ってサボッちった?」
バツが悪そうに笑うシュウジの顔が歪んで見える。なに…目が回って…
「…っエリカ!?」
熱を出したのは私の方。
意識を飛ばしてその場に崩れてしまった。