「こいつらに、今噂されてる怖い話聞かしとってんけど全然怖がれへんから、『お前ら、怖ないんか』言うたらいきなり笑いおんねん。ほんで、『何笑っとんねん』言うたら、こいつらが、『ただの噂に何怖がっとんねんな。あほくさ』って言いおんねん。ほんで、喧嘩しとってん」
重時は、呆れ気味に溜息をもらした。椅子を引いて、腰を降ろした。どうやら、少し熱が上がってきたみたいだ。
「お前ら、子どもっぽいのう。そんなちょっとしたこで、喧嘩すな。ほんで、喧嘩するんやったら外でしろ。外は寒いからあんまり派手に喧嘩できひん思うけどな。ほんでとりあえず、店の親父に謝っとけ。わかったか?で、話変わるんやけど、その噂ってどんなもんなんや?」
前にいる男は、話し出した。
「簡単に言うたら、刃傷ざたがあった夜には、赤い雪が降るっていう話。赤い雪を半刻ぐらい見てると、その殺された人の顔がぼんやりと浮かび上がって来て、殺されたやつに殺されるっていう話。旦那、知りまへんか?けっこう、言われてまっせ?」
重時も笑いそうになった。笑うと咳が出そうになるから、堪えた。
「赤い雪見たら、殺されるんやったら、なんでそんな噂が流れんねんな。そんなもん、嘘に決まってるやろが」続