それが悲劇の始まりである。
女生徒が家に入り、玄関で彼女の発した第一声が「臭い」であった。
彼の家では食事にスーパーの魚は出てこない。わざわざ北海道の漁港から取り寄せたものを食べるのだ。それは彼の母が決して譲らないポリシーみたいなものであり、意地でもあった。
一度旅行で北海道に来たときに食べた魚があまりにも美味しく、本州の魚が不味くて食べられなくなったそうだ。
彼の母はしまいに魚好きになってしまって、三食魚を食べないとジンマシンがでてくるまでに至った。
そういうわけで、彼の家には常に魚がありその臭いは家に住む者以外には堪え難い悪臭であった。
女生徒はそのまま帰ってしまい、その翌日から学校では「魚臭い」と非難されるようになった。
彼は実際そんなに臭いを発していることはないのだが、クラスの皆は彼に近づこうとしない。彼は完全に嫌がられる存在になった。
その状況に耐えられなくなった少年は、道庁の爆破を決意する。
ネットで爆弾の製造法を調べ2、3回実験したのち、千葉県から青森までバスで行き、船で北海道に上陸して食事もせず道庁に向かったという…。