生温かく頬を伝っている液体はあたしが手をついた床の木目に落ちた。
痛みより先に「床が汚れる」とぼんやり考えたほんの数秒はすぐに義父の怒号とともに現実に戻される。
いつもそうだ、もう痛みを感じないあたしになっていた。
ポトポトと音をたてて床に液体が溜ってく。
どうも目のあたりと口の中かららしい。
視界が赤くなってきた。
握り拳を掲げ訳のわからないことを口走りながらあたしが飛ばされた勢いで砕けた襖の上を突進してくる義父がぼやけた視界の向こうにいる。
すべてスローに見えるから悲鳴をあげながら義父に掴みかかる義母の言葉に思わず笑いそうだった。
「それ以上やったら死ぬよ」自虐的になっているのか殺せばいいと思った。
義母の防御か応援かわからない行動は義父には何の意味もなく弾き飛ばされあたしは胸ぐらを掴まれて持ち上げられた。
「このアマ」義父はヤクザみたいな言葉を使う。
「何ニヤケてけつかる」よく見ていたなと感心したのもつかの間あたしは意識がなくなった。