僕は言われるがままに衣類などの支度を済ませ、覆面パトカーに乗り込んだ。そして決意をかためた上で聞いた。
「僕には具体的にどんな容疑がかかってるんです?」
すると坂井刑事が面倒臭そうな顔をして僕を睨んでから言った。「君は事件の犯人についてどのくらい知っているかい?」
「ええと、犯人が未成年で北海道の魚が原因でそこまでに至ったと…」
「そうか、わかった。なら多少は話が省ける。じゃあなぜ彼は矛先を道庁に向けたかはご存じかな?」
それはマスコミが事件後もずっと理解不能の奇怪な行動として報道し、一部では何らかの儀式的な意味があったなどという専門家まで現われたぐらいに謎のままだった。僕は首を振った。
「実はだね、彼の母が旅行中に魚を勧めた者がいたんだよ。それは北海道のわりと人の入りがいい定食屋で、彼の母が何を注文するか迷っていたら『焼き魚定食が美味しいですよ』と、親切に言ってくれたんだ。それが道庁職員ってわけさ」
「そんな…理由で?」
「ああ、全ての発端はそれだと思ったよ。だがそれだけじゃあないんだ」
それだけじゃあない?ただでさえ馬鹿らしい話なのにまだ何かある?一体誰の責任なんだ?