僕が大好きな君の顔

成島パンナ  2007-06-09投稿
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僕、ミケこと三池ハルキには、大好きな、憧れのヒトがいる。

彼女の名前は、神山イバラ。

まさにイバラの様なとげとげしくも愛しい、綺麗なヒトだ。

彼女とは僕のバイト先の喫茶店で三、四年前に出逢って
それから僕らは色んな“繋がり”を持って来たけど…
結局僕は『ミケ』以上になれない。

でも
僕はそれでもいいのかなあと思う。

僕が大好きな彼女の
大好きな顔は
僕じゃない、もう一人の『猫』を想ってる時の顔だから。



* * *



「ん…」

瞼を通り抜ける白い光り。
鼻をかすめる、バラの甘い香り。
肌を刺激する、温いベッド。

こんなにも不機嫌で、最高に清々しい朝は、隣に“誰か”がいる日である。

「おはよ。タマ」

彼が声の方に目を開くと、愛らしく嫌らしい笑みを浮かべたイバラいた。
黒いキャミソールの隙間からのぞく白くグラマラスな肢体を、『タマ』こと玉峰ヒロヒトは、じっと見つめてしまった。

彼はいつだって“おあずけ”状態であった。

「なによ、いっちょまえに欲情する気?
それも朝から。」

イバラは呆れた笑みをタマに向ける。
タマも少しだけ、そんな彼女に呆れる。

「…俺達って、付き合ってるんだよな?」

「え?…あぁ」

きょとんとした顔で、彼を見つめるイバラ。
その表情が可愛くて、つい怯んでしまう。
それでも言いたい事を言えずにはいられないタマは…

「…セ…ックス、…しねぇの?」

やっとそう告げた。

イバラはおもむろにタマに近づき、股間に手を当てる。
「ちょ…?!」小さく身じろぎするタマ。
その様子を満足げに見上げ、彼女は言った。

「知ってる?
生殖機能のある『三毛猫』って、貴重なの。」

何の事かさっぱりなタマは、下半身の刺激に耐えるのに精一杯だった。

(「耐える必要もないのに…は…反射か…?」)

付き合って二年程の二人。
彼らは一度も、肉体関係を持った事がない。
「しよう」とタマが誘っても、彼女はいつもこう言うのだ。

「アタシ、価値あるオトコとしか寝ないんだ。」



二年程前、タマはイバラがミケと関係を持っている事も知りながら…否、持ったままでいいから付き合ってくれと言った。

そうして繋ぎ止めれば、少なくとも、彼氏でもただの友達でもないミケよりは、優位に立てる。



ミケとタマは昔から、良き親友であり

“良き”ライバルであった。

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