あたしの幼い頃の強烈な思い出は欲しかった玩具をサンタさんが持ってきたことなど子供らしいものは全くない。
シラフで毎日仕事にも行かず義母やあたしに暴力ばかり振る義父はコミュニケーション能力が欠如していたのかもしれない。
そんな義父と義母であっても仲良くした時期があった。
理由はやられるならやる側にという単純な物だけに長くは続かなかった。
しかしあたしには地獄だった。
ある明け方、ただ息が苦しかった。
あたしは半分眠りながら顔の上にかかった毛布を払い除けようとした。
遠くで聞き慣れた声がする。
「力を入れないと死なないよ」
顔の上の毛布が動くわけなかった。
義父と義母が両手で押さえていたからだ。
目玉が飛び出しそうになりながら暴れた拍子に毛布から片目だけ、どちらの指かわからないけどその隙間から様子が見えた。
見たことない歯を剥き出してひどく楽しそうに笑い合う義父と義母は人生最高の共同作業を成し遂げようとしていた。