「なんか前作の補完になってしまったこの作品。」
でも、あくまで篤の物語。
俺の名は片桐篤。何か、恋愛というものを超越したものに出会った気がして、心が暖かくなっている。
夏休みも終盤に入り、我が家に客の訪れを示すインターホンの音が響く。
「久し振りだな、マイブラザー。」
お前の兄弟になった覚えはない。
現れたのはオタクとして立派に生きる久保匠。
「帰ってきてたのか。」
「あぁ、一昨日帰ってきてたんだがな。昨日はやることがあって。」
「やること?」
「うむ、積みゲを処理してた。なぜ積んでいたのか不思議でならん。萌え死んでいた。」
どーいう死に方だ。
「片桐。」
久保は真剣な顔つきで俺の名を呼ぶ。
「小さい女の子は好きですか?」
「世間のためにお前は死ね!」
「うむ、ロリコンは死ななきゃ治らんな。」
腕を組んで久保は思案顔。いや、そんな真面目ヅラする会話じゃないから。
「で?何しにきたんだ?」
「俺は」
「俺は何しにきたんだろうな、とか言ったら殴るぞ。」
笑顔で言ってみた。だが久保にそういったプレッシャーは通用しないらしく怯みすらしない。
「ところで片桐よ。」
「なんだ?」
「恋は見つかったのか?」
「…そんな時期もあったなぁ。」
遠い日のことのようだ。
「…もういいのか?」
「んー、なんかもっといいもの知ったしな。」
それは、愛情を超えた信頼。
「とりあえずは、今の関わりを大事にしてみようかと。」
「残念だが、俺はお前とそんな関係にはなれない。」
「どんな勘違いだ、それは!?」
こんなのでも、一応友達だし、楽しいと言えば楽しいからな。一応。
「ふむ、ならばこれも付き合いだ。やれ。」
久保が俺に差し出したのは何やらしっかりした造りの綺麗な色遣いで可愛らしい絵が描かれた箱…。
「いらん!」
叩き付ける訳にもいかず、久保の胸元に押し付ける。
残念そうに久保はその年齢制限付きゲームを鞄にしまった。
先程思った事を撤回したい。
「で、これからどうするのだ?」
「ん、和真先輩が言ったように俺なりの好き、て奴を考えてみようかな、て。」
「…俺はお前の恋の見つけ方を聞いた訳でないんだが。」
「…え?」
うっわ、超ハズい。
ひとまず俺は、久保と街に出る事にした。
恋探し関係無く。