「その旅人が、僕らなんですか?」
男が頷いた直後
「ギャァァァアア」
向かいの建物から聞こえる、女の悲鳴。
「残りは、貴方ひとりですよ。」
ただ淡々と、言葉を発する。
同情なんて
できるはずがない。
もしかすると自分が、こうならない保証なんてどこにも無いのだから。
男の言葉を待つことなく。僕は刀を振るった。
キィンッ
落ちる銃芯。
「どこにでも行ってください。」
踵をかえし、部屋を後にする。
カチンッ
あたりに響く銃声。
先程の部屋の中から
鮮血が飛び出した。
こうなるって、
わかっていたから。
ほんの少しの、罪悪感。
でもそれもすぐ消える。
そろそろラトを迎えにいこう。これ以上汚い血をたべさせる訳にはいかないから。