幸一も嘉代の顔を見ると微笑んだ。
「どうしたの、部屋入りなよ」
嘉代は頷くとドアを開け、幸一を部屋に促した。
だんだん言葉が出てこなくなった。
ドアを閉めて振り返ると、幸一は窓を開け涼んでいた。
「あちぃなー、まったく」
「こーちゃん」
幸一は嘉代を見つめながら言葉の続きを待った。
嘉代は体の前で両手を組みながら言葉を慎重に選んでいた。
「あの…あ……昨日は、ごめんなさい…びっくりしちゃて」
「俺の方が悪かった、突然…」
すぐさま幸一が訂正したので嘉代は言葉が途切れてしまった。
「でも……俺は」
幸一がなにを言おうとしたのか分かったので、嘉代は咄嗟に言葉を発した。
「私!こーちゃんのこと好き!」
幸一は真顔で嘉代を見つめたままだ。
「小学校のころからずっと、好きでした」
涙がこぼれ始めて止まらなくなった。
「幸一って、呼んでよ」
嘉代ははっとした。
この気持ちを溜めていた分、年月が経ったのだ。
お互い大人に近づいたのだ。
「幸一」
「俺も大好きだ。嘉代」
二人は抱き合い、この埋められなかった年月をゆっくりと見つめはじめた。