海の見える車窓 完

 2007-06-09投稿
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幸一も嘉代の顔を見ると微笑んだ。

「どうしたの、部屋入りなよ」
嘉代は頷くとドアを開け、幸一を部屋に促した。
だんだん言葉が出てこなくなった。
ドアを閉めて振り返ると、幸一は窓を開け涼んでいた。

「あちぃなー、まったく」

「こーちゃん」

幸一は嘉代を見つめながら言葉の続きを待った。
嘉代は体の前で両手を組みながら言葉を慎重に選んでいた。

「あの…あ……昨日は、ごめんなさい…びっくりしちゃて」

「俺の方が悪かった、突然…」
すぐさま幸一が訂正したので嘉代は言葉が途切れてしまった。
「でも……俺は」

幸一がなにを言おうとしたのか分かったので、嘉代は咄嗟に言葉を発した。

「私!こーちゃんのこと好き!」

幸一は真顔で嘉代を見つめたままだ。

「小学校のころからずっと、好きでした」

涙がこぼれ始めて止まらなくなった。

「幸一って、呼んでよ」

嘉代ははっとした。
この気持ちを溜めていた分、年月が経ったのだ。
お互い大人に近づいたのだ。

「幸一」

「俺も大好きだ。嘉代」

二人は抱き合い、この埋められなかった年月をゆっくりと見つめはじめた。



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