『美樹っ!!此処は病院だ。静かにしなさい。』
苦し紛れの言葉に今度は美樹がうつむいてしまった。
『ふぃ〜お待たせ〜いやぁ意外にトイレが混んで…て…アレ!?何この空気!?…』
ユキが困惑しているのを横目に俺と美樹はずっと黙ったままだった。いつ終わるのかと思われた沈黙は容易く打ち破られた。
『ハーイ検温の時間で〜す!!』
沈黙を打ち破ったのは看護士さんの一言だった。
『げっ!!咲ねぇっ!!』
ユキがうろたえた。
『「げっ!!」とは何よ失礼ね。』
野島咲(ノジマサキ)ユキのイトコで看護士。
『咲さんお久しぶりぶりです。』
『おぉコウちゃん久しぶり。ちゃんとお見舞来て偉いね。てかそれよりい〜のぉ!?』
『何がですか!?』
『何って塾に決まってるじゃない。』
…ヤバい!!あまりの修羅場に忘れていた。
『ユキ!!急ごう!!』
『おぉっ!!』
病院を出て行く前に俺は美樹に耳打ちをした。
『美樹…さっきの続きはお前が帰って来た時な』
美樹は聞こえているのだろうが反応しなかった。
『じゃあ咲さん、失礼します。』
『病院内で走るんじゃないわよ〜』
『『は〜い!!』』
そう言って俺とユキは、怒られない程度の速さで病院を後にした。
_病院
『ねぇ、美樹ちゃん。コウちゃんに最後何て言われたの?』
『何でも…何でもないです。普通に「じゃあね」って…』
『あらそう…』(全然そんな風には見えなかったけど…ってイカンイカン!!患者さんのプライバシーを保護するのも看護士の務め!!…でも…気になるなぁ。)
『はいっ検温終わり。この分ならちゃんと退院できそうね。』
『…ありがとう…ございます。』
_塾
『ギリセーフだなコウ!』
ユキが親指を立てながら笑顔で言ってきた。
『あぁ。なんとかなったね。』
俺は親指は立てなかった。
塾に来る途中、ユキは一度も病院での事は聞かなかった、いや、聞かないでくれた。
美樹が帰って来て、話が済んだらユキには事情を説明した上でちゃんとお礼を言おう…そう思っていたのに…
6月上旬_退院当日_天気…曇り
_どういう事ですか!?…美樹が居なくなったって!!』
_つづく。