「ほら、着きましたよ」
「え?」「はれぇ…」
茫然自失のうちに私と大橋由紀江は、白虎と出会った川沿いの土手にいた。
すぐ隣には、笑顔の玄武老人。
少し離れた場所では朱雀と中原健次が何やら親しげに話し込んでいる。
「ひゃあっ!」
「う〜ん、…やっぱり」
「いきなり触んないで!」
「愛ちゃん、卑弥呼と全く同じ感触だな…」
「はぁ?」「どゆ事?」
いきなり触られて怒りを爆発させる寸前に、いなす感じで呟く白虎。
私達は思わずあっけにとられた。
「ひみこさんって、…もしかして飲み屋のオネエサンか何かですよね?」
「由紀江ちゃん、…僕がそんな奴に見える?」
「はいです!」
「…………」
きっぱりと言い切られ、白虎はいかにも所在なげな表情である。
「ふん、…普段の行いがモノをいう訳だ」
「うーん、反論出来ないのがツライ…」
「ふむ、愛どのが邪馬台国の女王に酷似しているのは否めぬが。
ただ、彼女はお主に身を捧げた卑弥呼にあらず」
背後からこつぜんと姿を現した青竜が、意外な裏話を物語る。
「え! ちょ、ちょっと待ってよ。私が卑弥呼に似てるって…?」
「ああ、多分転生したのであろうがな」
自分が歴史上の人物に瓜二つとは……
「えーと、…卑弥呼はね、その、……僕と結ばれてからシャーマンとしての強大な霊力を得たんだ」
「つまり、こやつの女好きが一大国家の礎(いしずえ)となった訳だ。
まあ、功罪相半ばす、といった所だな」
「おいおい、…罪はないだろうがよ青竜」
「やっぱり、どすけべーなヒトです」
「む〜……」
「あはははははっ」
周囲から散々な台詞を浴びせられた白虎の、何ともユーモラスで情けない顔を見て、私は笑い転げた。
遠くで朱雀と健次がこちらを指差し、何か言っている様だった。