昭久が声の方を振り返ると由香里がいた。
「…何してるの?昭久さん。」
「…お前に関係ねぇーだろ。邪魔すんな」
昭久は由香里から目をそらし、冷たく言い放つ。
「…死ぬのは勝手だけど後片付けするやつの事も考えろ」
「は?」
予想外のセリフに昭久は顔をしかめる。
「初めて会った時に昭久さんが私に言ったんだよ。何てひどい言い草なんだろうって思ったけど私はこの言葉に命を救われたんだよ」由香里は泣きそうなのをぐっとこらえて続ける。
「昭久さんの言葉は辛辣だけど、本当はすごく暖かい…志保さんもきっと解ってるよ」
“志保”の名前に昭久の表情が変わる。
「お前に何が解るっていうんだ!」
「解るよ!だって、だって、私も…」
由香里の目から涙が溢れ出す。
「…昭久さんの事、好きだもん!」
由香里は真っ直ぐ昭久を見つめる。いつも見せた事のない真剣な目で。
かと思うと、ふらふらとその場に座りこんでしまった。
「…お、おい!」
昭久は心配になり思わず、由香里の側に駆け寄る。
すると、由香里は昭久の腕にしがみついた。
「…もう、私昭久さんが心配で…仕方ないんです…。もう、どこにも行か…ないで…ください」
由香里は泣き崩れたぐしゃぐしゃの顔で言う。
昭久の腕にしがみついている手が弱々しく震えていた。
続く