鬼門?
遠くで雷のような輝きが見えた。大地が張り裂けんばかりの悲鳴を上げ、悶えているようにも感じられた。
何が起きてやがる…そう安藤天馬は思った。
「今のはね〜可王さまの羅殺剣だよ」
ふと顔を見上げると少女の姿をした瑪瑙が笑いながら宙を舞っていた。
「ちぃ!」
天馬は森の中を駆け出し姿を隠そうと木影に潜った。
(意味わかんねぇぞ…可王?羅殺剣を使えんのは幸司だけじゃねぇのか…おまけに…)
天馬がちらりと木から顔を出す。まだ子供の姿の瑪瑙がこっちに向かい楽しそうに歩いてくる。
(あんなワケわかんねーバケモノの相手しなくちゃならねぇとは…今日は厄日だね…)
天馬と瑪瑙のぶつかり合いは熾烈を極めた。二人とも本堂にいた筈なのだが劣勢になった天馬は外の森へ逃げ出し、瑪瑙もそれを追い森の中へ入った。
(さぁて…どーすっかな…あいつ斬っても傷一つつかねぇし…真面目に不死身なんじゃねぇか?)
天馬は額に出来た傷を拭いながらそんな事を考えていた。
「別に〜不死身じゃないよ〜ちょっと頑丈にしてるだけだよ〜」
「!」
見ると瑪瑙は既に天馬の居場所をつかみ回り込んでいた。
「…人の考えてる事読むのやめてくれる?」
「うふふん」
瑪瑙が天馬の様子を見てクスクスと笑みを漏らす。天馬は腕を振り上げ瑪瑙の頭に突き刺した。
「…ヒキョー者」
「教えてくれよ…お前どうやったら死ぬわけ?」
瑪瑙は頭に刺さった天馬の腕を引き抜くと半分潰れた顔を歪ませた。笑っているらしい。
「それが分かれば苦労しないわ…」
瑪瑙の姿がみるみる間に大人になっていく。それに伴い頭も元に戻っていく。
「これも言霊って奴のせいか?」
「そうね…言霊は全てを支配する。私の体が壊れれば、『治癒』の言霊がその部分を補うように造り治す…だから老いることはないし死ぬこともない…」
天馬は瑪瑙の体のあらゆる所へ腕をたて突き続けた。だが突き刺した所から傷が治っていく。
「へへ…不便な体」