「ねえミサキ?」
無事全快し、大学に復帰したミサキに、友人のカリンが話しかける。
「リク君毎日お見舞い行ってたんだって?なんかあった??」
と、期待に目を輝かせながらミサキに問うカリン。
「何かって・・・」
少し考えるミサキの頭に、この数日が思い出される。
お姫様だっこをされて、抱きしめられた。
思い出したミサキの顔が真っ赤に染まる。
「あー!なんかあったんだ。何?キスとかさるた?」
身を乗り出すカリンにミサキはたじろぐ。
「別にそんなんじゃないわよっ」
「じゃあ何よ」
「えっと・・・」
恥ずかしすぎて言葉にできないミサキの肩が誰かに叩かれた。
「?」
ミサキが振り向くと、そこにはカリンの彼氏のセイヤと・・・リクがいた。
「おーっす」
「どうも」
リクの姿を確認したミサキの顔が赤く染まる。
「セイヤ〜、あのねーミサキったら親友の私に隠し事するのよ〜〜。ひどいよねー」
カリンがセイヤに腕を絡ませて、甘い声を出す。
「なんだと?俺の愛しきカリンにそんなことをするとは許さんぞー!」
セイヤが棒読みで言った。
彼は実に大根役者だった。
「あ、ミサキさん?」
今まで、存在が薄かったリクが唐突に声を出した。
「ミサキさんもう授業ないですよね?」
「うっ、うん!!」
「じゃあ・・・行きましょうか」
行くってどこに?と聞くカリンとセイヤをよそに二人は歩きだした。
ミサキがリクの手をそっと握る。
するとリクは握り返してきた。
ミサキの顔がまた赤くなる。
そして、リクの口が紡いだ言葉は・・・
「ミサキさん寒がりですね。もう五月ですよ?」
彼はものすごく天然で鈍かった。
ミサキの顔が止まった。
それを見ながらカリンが呆れたように呟いた。
「なんであんなに鈍いの・・?」