折れた羽?

あい  2006-02-28投稿
閲覧数[355] 良い投票[0] 悪い投票[0]

第3話〜嘘〜

葵に出会ってから一週間、サヤは毎日学校へ行っていた。
なぜかはわからないけどサヤは葵の曇りのない笑顔を忘れることができなくて、また見たいと思った。
葵の笑顔はサヤを暖かい気持ちにしてくれる。
何も知らない無垢な笑顔。

あれから毎日葵はサヤに事あるごとに話しかけてくる。
相変わらずサヤの返答はそっけないものだったけれど、段々と会話も続くようになっていった。
それはサヤが葵に対して少なからず心を開いた証拠だった。

「相沢さんってバイトしてんの?」
「え?なんで?」
「一人暮らししてんでしょ?生活費とかやっぱかかんじゃん?」
サヤは戸惑った。サヤの生活費は援助交際をして稼いでいる。そんなこと言えるはすがない。
「うん。」
「へぇ〜どんなバイト?」
「…ファミレスだよ。」
「ウエイトレスみたいな!?」
「うん…。」
「いぃよねぇ…ウエイトレス…」
「…鼻の下伸びてる。」
「いけねっ」

本当のことなんか言えるはずがない。そんなことをすればもう葵の笑顔を見るどころか話しさえできなくなる。
サヤはそれが怖かった。
葵に言ったちいさな嘘。
葵には本当の自分は知られたくない。
サヤは自分を偽って、作るしかなかった。

学校も終わり、サヤが教室から出ようとすると葵が声をかけてきた。
「相沢さん!!今日クラスの何人かと遊び行くんだけど、行かない?」
葵の後ろを見ると男女5、6人がこちらに好奇の視線を向けていた。
その中の女子の視線の中には敵意や嫉妬も混ざっていた。
(あの子たちは葵のこと好きなんだろうな…。)
サヤは漠然とそう思った。
(邪魔するつもりはないし。)
「ごめん。用事あるから。」
「そっか…じゃあまた今度な!!」
葵は残念そうに笑いながらサヤに手を振る。
「うん。じゃあ。」
「気をつけて帰れよ!!」
葵の言葉にサヤは手をあげて答え、教室からでた。

そのまま繁華街に向かって暗くなるまで時間を潰そうと通りのショーウィンドウを見ながらぶらぶら歩きながら葵のことを考えた。
(なんで毎日話しかけてくるのかなぁ…?)
サヤは毎日葵に対して疑問だらけだった。
サヤは葵が不思議でたまらなくて、でもそんな葵に対して色々と話してしまう自分が不思議だった。
葵の笑顔を見るとほっとして心が暖かくなる。
そんな気持ちは今まで経験したことがなくて、サヤはそんな自分に戸惑っていた。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 あい 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ