「阿部さんの髪って超キレイですよね!何処のシャンプー使ってるんですかぁ?」
背後から彩が現われて、うちの目の前に座った。
「資○堂」
「え〜やっぱ資○堂良いんだ!?私も資○堂使おっかな〜」
人差し指をパーマのかかった毛先に絡ませながら彩がぼやいてるとと後ろからハスキーな声がした。
「元が違うンだよ」
和也!と声の主に目を向けると、ムッとする彩。
「何よ、その言い方。ムカつく〜」
「阿部さんみたいな美人とお前、一緒な訳ないだろ〜」
どっちも素直やないなぁ(笑)
まるで夫婦喧嘩や。
実はこの二人のやり取りを別の所で見ている人物がおった。
孝志は、台本から目を離し難しい顔をしてる。
うちにはすぐわかった。
孝志の想い人…。
その日の練習が終わって、うちは帰る前にトイレを済ませようと部室を出た。
数メートル先に真鍋の姿。(珍しいな、彩と一緒やないて…ホンマの喧嘩か?)
引き返すと部室の窓から孝志と彩が二人きりで向きあっとる姿が見えた。
「私、我慢出来ないっ」
(お、孝志チャンスか!?)
とか思うて、聞き耳立てとったら、
「私もう、阿部さんと演技出来ない!」
思いもよらん事を聞いてしもたんや…。