冥界王子1

N  2007-06-11投稿
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わたしはリュクス。

冥界王子付の執事だ。
仕事は単純。
王子のマネジメント。

王子は次の冥界王になる大事な冥界の後継者。
聡明な方だが、自己主張の激しい方でもある。
(単にワガママかもしれないが…)

「退屈だな…」
王子はティーカップに視線を落としてつぶやいている。
リュクスは胸騒ぎがした。
こんな時、王子は人間界に降りようとしているからだ。

人間…
とても弱くて、頭が悪い。欲望に流されたり、同じ過ちを繰り返したりする。
愚かな生き物。

リュクスは人間など、どうでもよかった。
しかし、王子は人間に触れたり、話を交したりするのが最近のマイブームらしかった。

王子が退屈な時はリュクスがとめても人間界へ向かうのだ。

王子は目を細めて遠くを見ていた。
果てしなく花が咲く丘が続く冥界。宙は墨を溢したような漆黒。くるぶしにかかる丈の赤い花が何処までも覆い尽す。

冥界にはないはずの一陣の風が王子の銀色の髪を揺らした。
「リュクス、人間界へ行く。」

リュクスは人間界に行きたくないが、王子に逆らうことはなかった。
行きたくない人間界に行くよりも、王子が暴れる方がよっぽど危険だ。

「ご一緒いたします。」



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