鬼門?
「だから私は可王様に殺してもらうの…あの人は約束してくれたもの。目的を達成した時は私を殺すって…」
「それが可王とやらに従う理由かい」
天馬が瑪瑙を見つめながら言った。瑪瑙の顔に妖しい微笑むが浮かぶ。
「まぁ、その前に俺が殺してやるけどな!」
その台詞とともに天馬は駆け出し、剣となった腕を何度も瑪瑙に斬りつける。
勿論、瑪瑙の体は斬られた箇所から再生を始める。天馬は傷が完治する前にもう一度同じ場所を斬りつけた。
「くぅ…うん…」
瑪瑙が快楽にも似た喘ぎを漏らす。月光に飛ぶ血飛沫が赤い蝶のように美しく舞い踊った。
「糞が、これでも駄目か!」
天馬の口から苦言が洩れる。幾ら体が機械化していようともその体力には限界が存在する。その限界が近づいていた。
「やっぱりあなたじゃ駄目ね…」
瑪瑙がため息を吐くように言った。
「安藤天馬、動くな」
瑪瑙の言葉が発せられた瞬間、天馬の動きが止まった。
「なんだ…動けねぇぞ…」
天馬が体を必死に動かそうとしてもまるで金縛りのように身動きがとれない。
「これも言霊の力…あなたと言う言霊を私は支配できる…正直に本名を言ったのが運の尽きね」
動けずに苦しむ天馬を見て瑪瑙の笑みが広がった。そして懐からおはじきを取り出し天馬の目の前で見せつけた。
「何の真似だ…」
「面白い物を見せてあげる…」
瑪瑙はそう言うとおはじきを天馬に飛ばした。
「はじけろ」
天馬の体に当たったおはじきがまるで爆発物のように破裂した。その衝撃に天馬が絶叫する。
「ふふ…おはじきと言う言霊を支配して私が言葉を加えたの…名前のあるものだったら私に支配できないものはないわ…」
天馬の顔が歪んだ。瑪瑙の顔を見つめながら笑う。
「何がおかしいの?」
「へへ…わりぃ…俺の負けだわ…降参…降参…」
天馬はヘラヘラと瑪瑙に笑いかけた。