峰葉山の麓に位置する、自然に恵まれたのどかな町、峰葉町。
町の外れには双寿湖もあり、峰葉山からの眺めは最高。特に紅葉の季節の山頂からの景観ははまさに絶景だった。
しかし、一年間を通してこの町に観光客が訪れることはなかった。理由は一つ。山の山頂に建設された“青村生物科学研究所”の研究施設。
何の研究をしているかは不明だが、この研究所のせいで観光客の足は遠のいていった。
当初町は、峰葉山周辺の動植物の保護と研究という研究所の建設目的を認め、建設を許可したが、町の住民が、檻に入った動物達がトラックで運び込まれるのを目撃しているだけで、その他の研究内容はおろか、施設周辺への立ち入りも禁止されていた。
しかし、建設から四年後のある日、研究所の職員が一人、何かから逃げるように、町の交番に駆け込んできた。
男の顔は恐怖に震え、白衣は血塗れ、手には何故か、空の注射器が握られていた。
捜査班が、謎に包まれた研究所に立ち入ったのは、それから四時間後の、2007年八月十五日、午後四時三七分のことだった。