ありがとう。。。
ありがとう。
それは終わりを意味する瞬間だった。
高校野球。最後の夏。県大会決勝。
午後1時、地響きのような歓声がやんだ。
スタンドがやけに小さく見え、彼女の涙。お父さんお母さんの涙まで見えた気がした。
なぜかおれは悔しさはなかった。
しかし目から流れる涙
応援してくれた人に対しての涙。
彼女に対しての涙。
自分の夢が消えた涙。
涙をぬぐうチマメだらけの手が痛い。
一瞬強く握った拳がだんだん力がぬけていった。
真夏の太陽で涙はかわいてゆく。
スパイクを履いたまま球場を出たおれは
少し伸びた髪に水をかけたのだった。