ヤス#69
「ほう…ヤスは果報者よのう」
「一体、これは何だろうか?」
「アイノツブテじゃ」
「アイノツブテ?」
「そうじゃ、心の清らかな者からしか生まれないものじゃ」
「何の役に立つ?」
「ヤスの母様は今、病んでいるじゃろう?」
「うん。良く知っているな」
「残念だが命は長くない」
「サトリ!めったな事は言うなよ!」
「まあまあ、落ち着けよ」
「落ち着いていられるか!人の話ならともかく、サトリの口から出るものは真実。めったな事は言わないでくれ。父と祖父が死んで、母までもが死ぬと言うのか?」
「ヤスよ。命には全て限りがある。母様の命はあと三日だ」
「な、なにー!」
「だが…」
「だが…何だ」
「つきものを取ればあと数年は生きられよう」
「シット…か?」
「うむ…ヤス」
「何だ」
「母様と通じたであろう?」
「う…うん…」
「ヤスよ。恥じるんじゃないぞ。この世では忌み嫌われる事かも知れんが、我々の世界では当たり前の事だよ」
「うん。恥じてはいない。俺は母を愛している」
「うむ…それが、シットの炎を燃えあがらせたのじゃ。しかも、物凄い力を付けている。ワシとてかなわない程じゃ。それで、母様は命を吸いとられているのじゃ」