ヤス#70
「そうだったのか…止められないのか?サトリ…母を助けてくれ」
「方法は一つ。もし、仕損じたら親子共々、海のモクズとなるぞ」
「ああ、構わない。母が死ぬなら俺も同じだ」
「ならば、教えてやろう」
ヤスは帰路についた。満天の星が煌めいている。
あの日もそうだった。龍神が現れた日だ。ヤスはシットと戦う決意を固めた。あと三日。時間がない。
ヤスは帰宅した。母が目を覚ました。そして、ヤスはサトリと会ってきた事を話した。
「どうだい?母さん。戦えるかい?」
「ヤス…ありがとう。でも、ヤスを危ない目に合わせる訳にはいかないわ…」
「母さん。分からないの?母さんが死ねば、俺は生きていけないよ。一緒に戦おう」
「ううっ…ヤス…ヤス…抱きしめて頂戴。ヤス」
「良いんだね。 戦うんだね」
純子は、はっきりと首をたてに振った。
翌日、ヤスは再び御床島に渡った。島の中腹に大きな木がある。
サトリはその木をユウキと呼んでいた。ヤスはそこのヤブを切り開き、平らにした。そして、塩をまいて清めた。次に大量の南竹の葉を集め、敷き詰めた。ふかふかの地面が出来上がった。その上から更に潮をまいた。