鬼門?
(早まったか…そんなことないか。俺が決めた事だからな…もう、雨宮さんや美優ちゃん達にも会えないか…情けねぇ、未練たらたらじゃん俺…)
天馬の意識が肉体を離れ、暗い常闇へと堕ちていく。
二度と出られぬ常世の国に。
羅殺剣同士の激突は大地を震撼させ、暗闇を斬り裂いた。
「ぐうぅぅ…!」
幸司が苦しそうに唸った。可王の羅殺剣は幸司のそれを遥かに凌いでいた。かつてない衝撃が羅喉を通し、幸司の体に突き刺さった。
「その程度か…残念だ…小鉄!」
小鉄の衝撃が幸司の羅殺剣を喰い尽くすようにかき消した。幸司は声を上げる間もなくその衝撃にのまれた。
「こう…じ君…」
蔵王丸が嗄れた声を絞り出した。幸司は羅殺剣の衝撃を身に浴びながらもかろうじてその生命を紡いでいた。だが、彼の体はボロボロに破壊され、傷だらけで倒れていた。
「安心しろ幸司…死とは終わりではない…新しい誕生の瞬間だ!」
可王は囁くような口調で幸司を見下ろした。そして、小鉄の刃を幸司にまっすぐ振り落とした。
可王の刃は幸司の体スレスレで止まっていた。幸司は何が起きたのか理解できなかった。
「…師匠?」
可王の視線が幸司から反れ、まっすぐ小屋へと向けられた。蔵王丸がその視線に気づき、力を振り絞り叫んだ。
「立て!砂羽くんを守るんだ!」
「まさか…」
可王が自らの胸を露わにする。そこには水晶のような物体が寄生するように食い込んでいた。それは何かに反応するように緑色の光を上げていた。
可王は剣を振り、その衝撃で小屋を破壊した。小屋には誰もいなかった。
「なんだと…」
可王が幸司の方へ視線を移すと彼に寄り添うように砂羽が立っていた。
「この娘…もしや…」
「逃げ…ろ…コイツは俺が…」
幸司は傷ついた体を圧し無理やり立ち上がった。
「こうじ…いやだ…死んじゃやだ…」
砂羽が泣き叫び幸司の体にしがみついた。その時、凄まじい地響きが起こり、鬼門の扉から光が発せられた。