らぶふぁんとむ14

あこん  2007-06-14投稿
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恵一は慣れた手つきで朝食を準備する。
隣りでは、半透明で体が浮いている幽霊全開な珠希がその手元を眺める。
珠希が恵一の住むワンルームに訪れてから数日が過ぎた。
最初の頃はいろいろとあったが、今ではもうお互いに慣れきっている。
「タマ、皿取ってくれ。」
恵一にタマと呼ばれる事も。
「はーい、あ・な・た。」
珠希がまるで新婚のように振舞うの…は違う。
「去れ、悪霊。」
「ひどい!」
とにかく、二人で暮らす事は自然になりつつあった。
それは学校でも同じで、恵一以外から見える事のない珠希は、これ幸いと恵一にくっついて歩き、授業の間は話などしてる。
どうせ聞こえないのだから珠希は声を出せば良いものを、一週間程はお互いに筆談で会話していた。

「…これは由々しき事態です。」
夕食を終えた恵一の部屋で、黙ってテレビを見ていた珠希が口を開いた。
「なんなんだ一体。」
食器を片付ける恵一は、いつものように軽くあしらう。
「恵一くんは分かってなさすぎです!一緒に暮らして二週間が経とうとしてるんですよ!同棲半月ですよ!」
「同棲じゃねーし。」
「じゃあなんだって言うんですか?」
恵一は少し考える素振りを見せ、答える。
「憑依?」
「人を幽霊かのように…。」
「きっぱりと幽霊だろが。」
小さく溜め息を吐いた恵一は食卓を拭いて流しへ向かう。
「うぅ、マンネリです。幸せな夫婦生活の危機ですぅ。」
「誰が誰の夫か簡潔に述べてみろ。」
「恵一くんが、私の。ドゥユゥアンダスタン?」
恵一は頬を引きつらせ、水を流す。
「うぅ、とにかくまずいですよぉ。」
「何がどうまずいのか知らんが。」
恵一は生活する中で問題と感じている事を思い出す。
「姿を隠して風呂まで付いてくるのはよせ。」
恵一が言った瞬間、珠希は明後日に視線をやり、吹けない口笛を吹く。
「あからさまに視線を逸らすのはなんでだ?」
しばし、無言。
「…気付いてたんですか?」
珠希、自白。
「風呂場には鏡があるだろうが。」
「迂闊でした。」
相手が幽霊だとしても、入浴を見られるのは気恥ずかしく、恵一は釘を刺した。
「あぁ、あと…。」
「まだあるんですかぁ!?」
ついでとばかりに生活の改善点を挙げる恵一に、正座する珠希は悲鳴をあげた。



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