君を初めて見たのは、高校に入学して間もない5月。
シトシトと雨が降る日。
君は、
君の大好きな、アイツに、とびっきりの笑顔を向けていた。
他の人には見せない顔。
それからも、いつも、違う角度からしか、見る事ができなかった笑顔。
正面から、見たい。
ずっと、そう思っていた。
《主な登場人物》
☆望月 周
高校3年。
バスケ部。
趣味は、女の子と遊ぶ事。
ただし、めんどうなのはお断り。
☆春日井 弘樹
俺の親友でバスケ部の部長。クラスも一緒。
俺とは、正反対で、真面目で、硬派で無口。
それでも、気が合う。…と俺は思っている。
☆朝倉 由奈
弘樹の幼馴染み。
同級生だけど、校舎は別。
地味だけど、かなりの美人。…だと俺は思う。
☆桜井 亜美
クラスメイトで、バスケ部のマネージャー。
俺の一番のお気に入り。
読者モデルとかやってる。
あの娘を初めて見たあの日から、何日かして、名前を知った。
「よく、渡り廊下の所で、休み時間話してる娘、彼女??」
バスケ部で、一緒だった、弘樹に、何気なく聞いてみた。
「…違うよ。幼馴染み。」
「どこのクラス??名前教えて☆」
不機嫌そうに、弘樹は答えた。
「特進クラスの朝倉由奈。」
続けて、もう一言。
「由奈には手、出すなよ。」
「…はいはい。」
初めて、話をしたのは、それから、2か月程してから。
廊下で、危なっかしく、教材を運ぶ、朝倉由奈を、弘樹が見つけた。
「どこまで、持って行くの?」
弘樹は、やけに、朝倉由奈に世話をやく。
「地学室…」
「悪い。周。これ、地学室持って行って。」
弘樹は、俺に言った。
「…へ?」
「俺、コイツ、保健室に連れてくから。頼むな。」
よく見ると、朝倉由奈は顔色が悪い。
「了解。」
「ごめんね。望月くん…」
初めて、声を聴いた。