手を払いのけたあと春香は、こう言った。
「どういうことなん?全然意味わからへんのやけど。あんたやったら分かるんやろ?」
頷く気配があって振り向いた。青年は答えた。
「最初に、拓也君はもちろん人間です。その角っぽいものはそのうち消滅します。角っぽいものがあるわけは、僕と会話したから出てきたんです。あの文字が読めたのも僕と話したからです。子どもというのは、よく幽霊とかの類を見れるといわれますよね?僕がそういう類の例です。僕は使者です。春香さんに見えるのは、たぶんあなたが子どもの心を、今でも大切にしているからでしょう。こんな話は信じられないかもしれませんけど、今は別にいいです」
ハァ?という風な顔の春香は、黙っていた。そして、とりあえず青年の名前を聞くことにした。
「いつまでも、あんたっていうのもあかんし、名前教えてくれへん?それに名前も知らんやつの話は信じられへんし」
そうですね、と笑って、「神谷肇といいます」と言った。そして、拓也の方に歩いていって、胸に手を当てた。すると、拓也は起き上がって、あっ、と言おうとした時、神谷に口を押さえられた。神谷はこう言った。
「拓也君、今は僕と喋らない方がいい。また倒れてしまうからね」続