ヤス#71
「よし!ここは大丈夫だ。あとは母さんだな…」
ヤスは引き返して行った。ユウキの枝にサトリが留まっていた。
「ヤス、明日はワシも助けてやれんぞ。踏ん張れよ…」
【決戦】
ヤスが帰宅したのは、夜の8時を回ったところだ。母はこの数日でみるみる衰えている。息をするのもやっとのようだった。
ヤスは純子の着物を脱がすと、抱いて風呂場に運んだ。湯船にゆっくりと浸けて洗ってやる。
「ああ…ヤス。数年前まで、私が洗ってやっていたのにね…」
「うん。覚えているよ。母さんはいつも優しかったね」
ヤスは純子を湯船から出すとカミソリを持った。
「いいかい?サトリの言いつけだ。毛を全部剃るよ。シットに引かれないようにする為だよ」
「ええ…剃って頂戴」
ヤスは純子の大切な髪の毛を剃り上げていった。体が冷えないように、時々、お湯をかけてやる。何時しか、タットブがカマドにマキをくべていた。おかげで何時までもお湯は温かかった。
「タットブ…感謝します」
「何の…これくらいお安いものよ」
「ヤス…ヤス…」
「何だい?母さん」
「私、命を賭けてヤスを守るわ」
「一緒に戦うんだよ」