航宙機動部隊第三章・6

まっかつ  2007-06-17投稿
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リク=ウル=カルンダハラの判断は間違いではない。
少なく共幼稚では無い筈だ。
だが、胸には弁別困難な後ろめたさが去来し、複雑なしがらみで責め立てるのを止めない。
純粋だが不合理な負の心情的磁場は、この時確かに少年を捕えて離さなかった。
だが―\r
『とにかく、もう決めたんだ…保身と思うならそう言えよ。今更美しい振る舞いだの名誉だのの為に生きるのも死ぬのも…俺は、御免だからな』
リクは本音を言い切ってやった。
テンペ=ホイフェ=クダグニンは軽蔑はしなかった。
糾弾もしなかった。
代りに
『でも…でもっ、救われた…命も有ったわ!』
少女の示した予想外の反応は、観戦武官の胸に見えぬ波紋を波立たせるに充分だった。
『おっまえ…まだ!』
分からないのかと同胞は睨みつけたが、
『マエリーはね…子供を救ったわ!爆風に吹き飛ばされて、死体の間に挟まれて…そのまま隠れていれば、殺されなかったかも知れないのにっ…!でもっ、彼女はっ…!その後、倒れた母親にしがみついたままの子供が狙撃手に撃たれそうになっているのを見てっ…!それでっ、その子を庇って…射殺…されたのよ!!』
衝撃に満ちた事実と、その語り主の怒りにまみれた真剣な形相に圧倒されて、今度は少年が後ずさりする番となった。
(そ…そんな…あの時の俺と…同じだってのかよ)
フーバー=エンジェルミの手下達と闘った自分と、マエリーの姿が頭の中でデジャヴして、混乱を来たしたリクは額に手を当てた。
『彼女一人に出来た事が…どうして私達二人に出来ないなんて貴方は言うのよ!ねえ、どうしてよ!?マエリーはそれこそっ、何の関係の無い子供の命を守ったのに…今ここでっ…それすらも人事で済ましたらっ、それこそフーバー=エンジェルミの思う壺じゃない!!』
白兵戦部隊の勇者にも勝るその剣幕・迫力に、少年は完全に押され、歯ぎしりしながら呻く以外の何も出来なくなってしまったが、
『だ…だけどっ…本当ならっ、それは!もっと上層がやるべき事なんだ!責任を負うべきはそいつ等であって、俺達が、そこまで!』
見苦しいとは知りつつも、リクは抗弁を試みる。
確かに彼の説明は正確であった。
もう少し時間が立てば、泣きじゃくり始めた少女も納得してくれたかも知れない。
だが、程無くして、二人のパネルカードがそれぞれの懐で着信を告げた。



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