「彩は、あたしがきっと憎いよ」
「憎いとは思っていないよ。」
銀髪の青年は言った。
「お前だったら、憎いと思ったり、嫌いな相手を側に引き寄せたりしないだろう?」
「自分でこの世を去った人間は、この世から離れられなくなって何かに依存し続ける。あの娘はあの鏡だった」
「お前を鏡に引き込もうとしたのは一緒に居たかったからじゃないのか?」
「彩はまだ鏡にいるの?」
「一度、自分で命を絶てばやり直しはきかない。
この世から消えることが
できずに
依存した場所で永遠に孤独に苦しみ続ける。例え、お前を鏡に引き込んでもそれは終わらないだろう。」
「鏡の中…、どんな感じなんだろう?」
「鏡は、鏡さ。
想像なんてできないね。
お前、おかしな奴だな。一度、引き込まれて殺されかけたのにあの娘の心配するのか?」
「あたし…後悔しているの、彩を失ったことに。」
「その後悔は、
お前がこの世を去るまで持って行け。冥界に来るまでな…」
「め…冥界!?
あなた…誰なんですか?彩の知り合い?」
銀髪の青年は腰を掛けていた机からゆらりと立ち上がった。