「俺?…… 俺は…リュクスだ。」
「…リュクス…さん?」
「…王子、私の名を語るのはおやめ下さい。」
初めて聞く声に由香が振り返ると、教室の窓辺にいつの間にか誰かがいる。
長髪の女性…?
それは正確には男性なのだが女性にも見える繊細な顔立ちが由香を混乱させる。
「…リュクス、居たのか。」
「居たのか、ではありません。王子!冥界にそろそろお戻りになりませんと…!」
冥界!?
王子?
由香は訳がわからなくなった。
もしかして…夢?
夢であれば
目の前の美しすぎる2人にも、この会話にもなんとか順応できるわ。
由香は、スーッと息を吸うと
まるで痴話喧嘩をしているような2人の青年に聞いた。
「あの…リュクスさん?」
「気安く話しかけるな…人間。冥界の王子の前だ。
そなたの命など思うがままにできるのだ。」
長髪の青年が冷酷な眼差しを由香に向けた。
由香は一瞬ビクッと体をこわばらせたが、冷たい視線に怯む事なく言葉を続けた。
「冥界の王子…様なら、
彩を鏡から救い出せますか?あたし、彩を助けたいんです!」