ヤス#75
ユウキの上に小さな光る玉が浮いた。
その玉がゆっくりと降りてハヤトの体の中に消えていった。
ハヤトは微動だにせず、ヤスと純子の行為を見つめている。
「母さん…どうだい?…つらくはないかい?」
「ああ…そんなことは無いわ…ヤスを求めるのは、とても気持ちの良いものよ」
「もっと、求めてもいいかい?」
「ヤス…求めて…母さんを求めて!」
「母さん…母さん。愛しているよ!」
ヤスが純子を強く抱きしめると、純子はヤスの腰に足を絡め、深く迎えようとしていた。
大音響が鳴り響き、大粒の雨が、ほとんど真横から二人を打ち出した。
南竹がしなり、葉が千切れて飛んでいく。
ユウキの枝が、音を立てて、折れ散っていった。
飛んだ枝がヤスの頬を掠めて切り裂いた。鮮血が飛んだ。
「うっ!…現れたな…」
「おのれーっ!…止めないか!二人とも離れないと、なぶり殺すぞ!えーいっ!離れろ!」
シットがそのおぞましい姿を現した。宙に浮いている。長い髪を無数の蛇がすみついた様に波打たせ、黒ぐろとした顔には真っ赤に開いた口が、耳元まで裂けていた。