ヤス#76
眼は海底の海老の様に赤く光っている。その眼の奥には嫉妬の炎がメラメラと燃え上がっていた。
ヤスと純子の動きが海原の波のようにゆっくりとうねりはじめている。
純子はあえぎ、細い足をヤスの逞しい太股に絡めている。
ヤスの一物が純子の中にゆっくりと打ちこまれる度に純子は顎を上げ、喜悦の吐息を零していた。
何者も寄せつけない愛の行為をシットは見せつけられた。
シットの情念は極限に達している。眼の赤みは更に増し、光りかがやいていた。
目尻からは血のような涙が滴り落ちている。その雫が青い草むらの上に落ちていくと、草の命は瞬時に奪われ、枯れ果てていく。
シットが動いた。
「ぐぅあーーっ!止めろと言っているのが聞こえぬかー!うぬらめっ!こうしてくれよう!」
波打っていた黒髪がみるみる伸びていき、幾つかの束になった。そして、太い鞭になった。鞭に変わった髪が大きくしなると、ヤスの背中目がけ、打ち下ろされていった。
「パシィッ!パッシイ!パッシイ!」
「ぐぅあー!ううっ!…がっ!」
ヤスの背中の肉が裂けた。鮮血がとぶ。