ヤス#77
飛び散った血が、シットの血を浴びて枯れた草を赤く染めると、黒く枯れていた草が青く蘇える。それを見たシットが一瞬たじろいだ。
「な…なんと…流石に神に選ばれた子…何があっても我が世界へお前を連れて行くぞ。この世を再び我々の物にする為…お前は邪魔なのだ。覚悟せいっ!」
シットが再びヤスを攻めたてる。
ヤスの背中は血で真っ赤になっていた。振り下ろされる鞭。飛び散る血しぶき。こぼれ落ちる血の涙。枯れる草むら。蘇る命…。
辺りは混沌とした世界が広がっていった。
「ヤス…ああ、ヤス…私が打たれます」
「いいんだ、母さん…母さんは俺を深く迎え入れてくれ」
「ああ…ヤスーっ!」
「ぬぁーっ!食らえーっ!」
「バシィ!バッシィーツ!」
ヤスの背中はもう打たれるところが無い程、赤く染まっていた。
それでも容赦なく鞭が振り下ろされてくる。ヤスは鞭打たれる度に、歯を食いしばり激痛に耐えた。
「純子よ…お前が打たれろ。そして、命をよこせ。そうすれば、ヤスは助けてやるぞ」
「ヤス!代わりましょう!私が打たれます!」
「駄目だ!母さん、騙されるな!…それより、早く気をやれ!」
「ああ、ヤス、ヤスーーっ」