「待ってください!」
先に歩くうちの後、チャリを押しながら追って来る孝志。
うちは雑貨屋の前で立ち止まり
「アンタはここにおり」
と、睨みを聞かすと店の中に足を踏み入れた。
三分も立たずに店を出る。
「はい」
うちは、小さな包み紙を孝志に差し出した。
頭を下げて受け取る孝志。
「あけていいですか?」
「ん」
カサッ…。
中から出てきた黒ぶち眼鏡のチャーム付きストラップを目の前に孝志が呆然としてる。
「アンタにはそっちの方が似合うやろ」
男にプレゼントなんか柄じゃない。照れ臭いのを隠すようにそっぽ向いた。
「あ、ありがとうございます!」
めっちゃ嬉しそうやし。
変やな、付き合ってた男にすら、何かやった事なんかないのに。
時は過ぎ、大和中学文化祭がやって来た。
慣れんかったメイド役も、思ったよりなりきる事が出来て、劇は大成功を遂げた。
うちの役目はこれでおしまいや。
結構、短いようで長かったな。
「お疲れ様です」
孝志に背後から呼ばれてうちは笑って返した。
皆に別れを告げて部室を後にしたら、いつもみたいに、孝志のチャリの後ろに乗り込む。
最後やのに、いつもより口数少ない。